アドリア海の女王と謳われる水の都ヴェネツィア。
私がヴェネツィアの町をテーマに作品を制作し始めたのは、1987年のことです。
旅人としてこの町を訪れたとき、この町の魅力に取り付かれ、
作品という形で私なりの表現をしたいという思いから離れられなくなったのです。
ラグーナ(潟)を遠景にサンマルコ広場から望むサンジョルジョ島、
薔薇色の灯りを残して暮れてゆくドゥカーレ宮…。
そのひとつひとつが栄華絢爛であるとともに、言いようもない哀愁に縁取りされています。
貿易によってもたらされた東洋と西洋の文化の融合、 過去の栄華とその後の衰退、
海を舞台としたさまざまに乱れ咲いた特異文化は
私を限りない幻想的イメージの世界へと誘います。
ヴェネツィアから受けたインスピレーションをジュエリーに託して、
この数年は私なりのドラマを描き続けています。
 
 

イタリアの伝統的な金銀細工のアルチザン(職人)であるグレコ親子は、薫子コレクションには欠かせない存在。 お父さんのドミニコ・グレコは幼いころから彫刻の技術に優れ、美術学校には、彫刻コンテストの優勝賞金で通っていたというほどの才能の持ち主。創作活動40年以上のキャリアを持ち、一番の大作は等身大の馬の彫刻。馬が好きだった息子をなくしたご両親の依頼で作ったものだそうです。バロック調の作風が得意で、薫子コレクションでは、仮面のブローチなどの製作にあたっています。一方、娘のリディアは、鳩や、エンジェルなどの可愛いモチーフが得意。スフィンクスの恋のスフィンクス像は、彼女の手によるものです。